大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪高等裁判所 昭和53年(ネ)471号 判決 1978年12月07日

控訴人

大森久雄

右訴訟代理人

後藤一善

被控訴人

西原伸起こと

韓長淑

右訴訟代理人

島武男

外一名

主文

一  原判決を次のとおり変更する。控訴人は被控訴人に対し被控訴人が原判決添付の物件目録記載の土地建物につき大阪法務局豊中出張所昭和五〇年一〇月二日受付第二五七二七号をもつて経由した所有権移転請求権仮登記の本登記手続をするについてその承諾をせよ。控訴人は被控訴人に対し被控訴人が右土地建物につき右所有権移転請求権仮登記の本登記をしたときは右土地建物を明渡しかつ本登記をした日の翌日から明渡済に至るまで一か月金一三万七七七五円の割合による金員を支払え。

被控訴人のその余の請求を棄却する。

二  訴訟費用は第一、二審とも控訴人の負担とする。

事実《省略》

理由

一<前略>

5 控訴人は、成安物産株式会社より本件土地建物の賃借権を、もつはら使用収益を目的とするものとして(すなわち、担保の目的物から除外して)譲受けたものであるから、民法三九五条の適用があるものと主張するので考えてみる。担保目的をもつて制限された賃借権をその制限のない賃借権とするについては担保設定者(賃貸人)の承諾が必要であり、本件につき同設定者たる横川正雄の承諾を認めるに足りる証拠はない。のみならず、仮登記担保権は純然たる担保権ではなく、その所有権的構成を全く否定し去ることはできないから、これに民法三九五条を適用(類推)するのは相当でないというべきである。すなわち、控訴人は短期賃貸借権をもつて仮登記担保権者である被控訴人に対抗することができないと解するのが相当である。控訴人の右主張は採用できない。

控訴人は成安物産株式会社から本件土地建物を転借したとも主張するけれども、その転借権について、その基本賃借権の担保目的による制限の効果を免れることはできない。さらに、信用できない前掲丙第四、第五号証を除き、右転貸借を認めるに足りる資料はない。控訴人の右主張も採用できない。<以下、省略>

(山内敏彦 高山晨 大出晃之)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例